京都観光あれこれ 〜嵐山、嵯峨野

早朝の嵐山 竹林。昼間は観光客だらけで撮影は厳しい、、。だが早朝も地元民の散歩やジョギングが多く、撮影はタイミングを狙う必要あり。

嵐山はなぜ人気がある?

嵐山は京都では東山界隈と並ぶ人気の観光エリアですが、なぜここまでの人気なのか、その理由を分析してみたいと思います。まず京都に観光に来る人の目的は、ここ嵐山だろうと東山だろうと、岡崎、三尾、大原、伏見と問わず日本的な歴史的景観を見てその歴史を感じると言うことが全てです。寺や神社は全国どこにでもありますが、京都の寺院は、ここは「京都のお寺」だという気位を持って手入れされているため、どの部分を切り取ってみても侘び寂び(わびさび)と雅(みやび)に溢れた雰囲気があります。ここ嵐山の場合だとさらに嵐山や小倉山などの自然の景色を借景とした景観の良さが相乗効果で京都らしさをより一層高めて、観光客の京都行きたい心を満たすのだと思います。

次に個別の要素で見てみますと、天龍寺や清凉寺など個性的で見どころの多い寺院、竹林や大堰川などの自然の風景、嵯峨方面への観光要素の広がり、嵐電や阪急、JRといった郊外でありながらアクセスの良さ、これらの各要素が複合的に絡んでおり楽しめそうな場所、飽きさせない場所との認識となっているのです。

嵐山の竹林を見上げて。

2回目以降の嵐山

初めて嵐山に行った時には、渡月橋近辺からお土産店の並ぶメイン通りを北上して「竹林の小径はこちら」という案内板に従って、多くの観光客や人力車と同じようにズルズルと人混みの竹林を往復し、最後に天龍寺を見て嵐電嵐山駅周辺で京土産を買って終わりと言うパターンは多いかと思います。そこでここでは、今回2回目の嵐山にこれから行くという場合を想定してより満足できる嵐山をご紹介していきます。

渡月橋から見た早朝の大堰川。この橋付近から下流側は桂川となる。いずれにしても嵐山は早朝に限る。よって宿は嵐山で取るのが決め手。

⓪嵐山は早朝に限る

先に述べたように嵐山は、自然の景色と一体化した日本伝統の歴史風景を感じることができるエリアでありそれが最大の魅力ですが、やはりその魅力に比例して大勢の観光客がドッと押し寄せて大変な混雑状態が慢性化しています。せっかくのこの風情を十分に堪能するなら早朝に訪れるのが最も効果的です。それにはここで宿を取るのが最良の策となります。宿を早々にチェックアウトするか、朝食前にカメラを持って散歩に出るといった具合です。

①法輪寺

阪急嵐山線の嵐山駅から嵐山観光を目指す場合は、とかくすぐに渡月橋に向かってしまうのは無理もないところですが、渡月橋のわずか手前に素晴らしい佇まいのお寺があります。法輪寺です。

法輪寺三門。この三門近辺から石段の参道にかけての青もみじがなんとも言えない雰囲気。

法輪寺は約1300年の長い歴史を持つお寺で、奈良時代の当時の天皇の勅願により高僧行基による開山で開かれた由緒あるお寺で、奈良の平城京から遷都してくる前よりこの地にあったと言えます。渡月橋もかつては法輪寺橋という名であったようです。

三門廻りでは参道の両側から覆い被さるようにモミジがせり出して来て、青モミジの時期は透き通る薄緑の屋根のようで印象的です。紅葉の時期は残念ながら訪れたことがないのですが、このモミジの感じからして相当の見応えでしょう。ちなみにここに植っているのはモミジのようですが一般的にはカエデといい、カエデの中でも葉の切れ込みが深いものを特にモミジというそうです。

本堂を始めすべてのお堂は蛤御門の変の際に焼かれてしまった。

石段の参道を登り切ると正面に本堂が見えます。そのちょっと手前の左手には多宝塔があります。いずれも堂々とした存在感のある建物です。歴史の深い由緒あるお寺さんですが、十三参りや季節ごとの法要の時以外は静かな佇まいを見せており、ゆっくり心を落ち着けると言うお寺本来の味わい方を満喫できます。

法輪寺 多宝塔

②宝厳院

宝厳院は天龍寺塔頭寺院です。塔頭(たっちゅう)とは、大きなお寺の境内や近辺に建つそのお寺の子院であり、主に歴代住職や関係の僧侶の居住を兼ねたお寺です。

受付を兼ねた三門。

三門で受付を済ますとすぐに庭園が広がっています。獅子吼の庭(ししくのにわ)と名付けられたこの広い庭園は回遊式にしつらえられており、掃除と手入れが行き届いて苔の黄緑色が眩しいくらいです。石や樹木の配置や茂り方までもがデザインされているかのようで、見せるための完璧なまでの演出がなされていると言った感じです。これが京都のお寺ではまあスタンダードなんだと言ったら大袈裟ですが、これこそ京都であり、京都はこうでないとならない、と各寺院の方々や庭師の方が思っている事なのです。

回遊式庭園を順路に沿って歩くといろいろな事を考えながら散策できる。

嵐山の場合はこう言った自然の要素の濃い構成が特徴であり、東山あたりの京町屋の古い街並みを中心としたエリアとはまた違った印象だと思います。

無畏庵越しの獅子吼の庭。

ここ宝厳院は境内の雰囲気が、寺院というよりは貴族の別荘などの名勝庭園のような感じであり、庭園を歩いているとお参りするという事を忘れてしまいそうで、現に私も確かお参りをしないで出てきてしまったような気がします。御朱印は受付のところで書き置きタイプの御朱印を授与頂けます。

木の幹にも苔が。

宝厳院は、天龍寺のすぐ南側にありますが、この場所を探して歩いていると、この道は初めて来たなと新たな発見ができました。しっとり落ち着いた佇まいで嵐山らしさが感じられます。ただしこちら宝厳院は基本的には拝観不可のお寺です。春と秋の特別拝観期間のみ参拝することができますが、その期間はかなり長めに設定されているので計画に組み込むことは可能かと思います。

宝厳院 獅子吼の庭の見事な苔のジュータン。

③常寂光寺

ここはもう嵯峨野ですが、最近は嵐山観光の観光客もここまでは足を伸ばす人も増えてきました。こちらもモミジがきれいな名所ですが、京都のあちこちにカエデ(モミジ)が多いのはかつて貴族が自分の邸宅を築く時にこのきれいな樹木を庭に植えたいと、山から取ってきて街や庭に植えたところから広まり、今や京都中に広がりあちこちで紅葉の名所が存在することとなっています。常寂光寺の詳細は別ページ「京都散歩〜 常寂光寺」をご参照ください。

受付を兼ねた三門を入ってすぐにある中門。絵になりすぎるくらいの景色。
石段を登った先にある本堂。境内の佇まいの良さはここ以上のお寺はないと言えるほど。
境内の最奥部に建つ多宝塔。江戸時代初期の建立で重要文化財。ここまで登ると眺めが素晴らしい。

④松籟庵

いささか突然ではありますが、松籟庵はお寺ではなく食事処です。こちら、一軒家の隠れ家的な佇まいでゆっくり食事ができる上、美味しい京料理がリーズナブルに堪能できる名店です。場所的には、渡月橋から大堰川沿いに上流に向かって歩き、周りが森っぽくなって来たあたりで山中に分け入って行くとあります。突然訪問しても入店はできないと思いますので、必ず予約をした上でお訪ねください。

松籟庵のアプローチ。割と足元が悪いので、足の悪いご高齢の方などは辛いかと思います。
丁寧な盛り付けに感動。この八寸盛り以外にも先付、揚出し豆腐、メインの湯豆腐、ちりめんご飯、デザートが付く。
室内から大堰川の景色が。たまに通る川下りの船を見ながらの食事も楽しげで良い。

⑤落柿舎

常寂光寺まで来たらもうここは嵯峨野です。このあたりはのんびりした田舎風景で、季節のいい暖かい日の散歩などはこの上ないかけがえのない時間を得られます。その常寂光寺からさらに嵯峨の奥に向かって二尊院の方向に歩いていくとちょっと開けた場所に出て、右手に落柿舎が見えます。落柿舎はお寺ではなく、ちょっとした資料館的な施設ですが、侘び寂び感を感じる古風な佇まいです。

落柿舎エントランス。拝観料250円を支払って入場。

江戸中期の俳人向井去来の邸宅跡であり、現在の茅葺きの建物は1770年に弟子によって再建されたものです。ある年の秋の季節に庭の柿の実が一夜にしてすべて落ちてしまったという事があったそう。そこから落柿舎とついたようです。

古風なしつらえが室内の各所に印象的に施されており、写真の被写体にはもってこいです。

落柿舎では室内に上がって見学はできません。決して広くはない庭ですが立ち入っての見学も可能です。ごく短時間で見学できるので嵐山・嵯峨野観光に加えてみてください。

⑥二尊院

落柿舎からさらに嵯峨野を奥に進むと、もうこの辺りは嵐山の観光地的な雰囲気はありません。静かな住宅地となり、所々に自宅を改造して軒先を簡単な店舗とし、手作りの土産品を売っていたりするのどかな景色が広がっています。その奥に端正で風格もあるフォルムの三門が参拝者を誘っています。ここが二尊院です。三門の間から参道を覗くと、鮮やかな黄緑色の青モミジと真っ赤な躑躅が対比の構図で切り取られて、印象派の絵画のようです。

境内は木々の緑もきれいで、春先には二尊院普賢象桜という八重の桜が淡い色合いできれいです。こちら、御本尊として阿弥陀如来と釈迦如来の二体が同じ大きさで左右対称に並んでお祀りされているところから二尊院と名付けられています。山号の「小倉山」の小倉は、小倉百人一首の小倉であり、小倉あんぱんの小倉でもあります。小倉あん発祥の地の碑が境内に建っています。

⑦ふたつの念仏寺

ここまで来たらせっかくなので嵯峨野の奥、奥嵯峨まで行ってみましょう。二尊院から歩いていくと地名は鳥居本となります。この先の山、愛宕山にある火除の神様として新たかな愛宕神社の鳥居があるための地名です。風情ある細い道を緩やかに登って行くと左手に念仏寺への坂道が見えてきます。こちらの念仏寺は化野念仏寺(あだしの ねんぶつじ)です。なぜこうやって分けて言っているかというと、ここよりさらに奥にもう一つの念仏寺、愛宕念仏寺(おたぎ ねんぶつじ)があるからです。化野(あだしの)という文字でわかる人はわかるかもしれませんが、「○○野」と言う地名は京都では葬送の地であることが多いです。清水寺の奥は鳥辺野という葬送の地であり、船岡山の周りは蓮台野とか紫野が、そして奥嵯峨は化野です。奥嵯峨のふたつの念仏寺は葬送の地に有るべくして有るお寺という、由緒や成り立ちなどちょっと違う雰囲気の漂うお寺です。

化野念仏寺は浄土宗の寺ですがお堂には真言宗の開祖である空海の像が祀られています。それはこの寺の起源が空海が開いた小さなお堂が始まりだからだそう。その後鎌倉時代になって法然上人が浄土宗に改めたため現在では浄土宗のお寺となっています。境内には賽の河原に見立てた無数の石塔が置かれており、葬送の地の寺であるこの寺をより神秘的にしています。

愛宕念仏寺は奈良時代に創建された天台宗の愛宕寺が起源で、大正時代にこの地に移ってきました。しかし昭和の時代となってからは住職不在の寺となり京都一の荒れ寺となってしまいますが、最後の仏師と呼ばれた西村公朝によって復興されます。こちらも化野念仏寺と同様に境内に無数の石像が並んでいます。こちらは五百羅漢をお祀りしているのですが、五百羅漢とは釈迦の五百人の弟子のことです。鎌倉時代に建立された本堂は重要文化財指定であり、ご本尊の千手観音も鎌倉時代の作で、慈面悲面の観音と呼ばれています。頬が左右対称ではなく向かって右の頬は上がり気味で悲哀を持ち、左は下がり気味で慈愛を表しています。非常に珍しいお像ですのでぜひとも訪れて頂きたいです。

嵐山、嵯峨野をまわってみて

以上、見てきたところ以外にも天龍寺や大覚寺、清凉寺など見るべきところがたくさんあるお寺さんが多いです。祇王寺の小さいながらも可愛らしささえ感じる苔の庭も素敵です。こうやって見てみると観光要素がいろいろある上に、嵐山・嵯峨野は歩く時間が必要なのでルート計画をどうたてるか、所要時間の把握をした上で、他の観光エリアとの時間配分を考えるほうが良いと思います。

竹林の小径からトロッコ嵯峨駅を超えたあたりにある、小倉池。

コメントを残す