京都観光あれこれ 《詩仙堂》

詩仙堂とは

ここは、江戸時代の文人である石川丈山が隠棲の地として建てた山荘を寺へと改めた、曹洞宗のお寺です。正式には「詩仙堂 丈山寺」(じょうざんじ)といい、丈山の趣味趣向が今に残り、この寺のアイデンティティとなっています。

石川丈山は関ヶ原の戦にも参戦した徳川の家臣でしたが、大阪夏の陣で武士として先駆け禁止の軍令違反を犯したとして謹慎を命ぜられたのを機に武士を隠退しました。それからは文人として漢詩や書道、庭園の設計、茶道など多方面で活躍することとなります。60歳の時よりこの地を終の住処としつつ禅の修行にも勤しんだということです。90歳で亡くなった後、ここは丈山寺として寺に改められ今に至ります。

詩仙堂へ

詩仙堂へは叡電の一乗寺駅から東山の方向に歩き、途中曼殊院みち沿いに植えられた「一乗寺下り松」を目印に歩き10分ほどです。近くには圓光寺や金福寺があるので合わせての参拝がおすすめです。近くで昼食を取って、曼殊院門跡まで行ければこの近辺の見どころは踏破となります。途中の道は多少分かりづらいですが、ところどころにある案内看板をよく見て行けば辿り着けると思います。

小さめなこじんまりとした山門がひっそりと建っています。寺院の門というイメージからはかけ離れた風情ある作りのため、うっかり通り過ぎてしまいそうです。

門をくぐると石段が十数段ある石畳のアプローチが続きます。あえてこういうアプローチを参道のようにあつらえてあるというのも、雰囲気作りの点で重要だと思わせてくれます。良い雰囲気のところだなあと、つぶやいてしまいます。

最後はクランクの様に2回折れ曲がって石段を登り、中門があります。アプローチからそのまま中門があるより段差をつけて折れ曲がると言う工夫で格段に風情が増します。京都のお寺はこういった工夫が上手ですし、細かいところもおろそかにしないと言うのがすごいと感じます。

顔みたい。

中門を入る際にちょっとドキっとします。門越しに見る建物の窓が顔に見えて、思わず中門の屋根を髪型に見立てて写真を撮りたくなってしまいます。

ひとたび顔に見てしまうと、どう見ても顔にしか見えなくなってしまう。

拝観受付で拝観料500円を納めて建物の中にまずは入ります。ここまで入ってきてもここがお寺だと思えず、古民家の展示施設にでも入るかのような印象です。

建物に上がった瞬間にわかりますが、さすが昔の建物はいろいろな部分がそれぞれサイズが小さく作られているなと感じます。また、相当古い建物を丁寧に維持している事も感じます。室内を歩く際には心持ち忍び足のように慎重に歩いてしまいます。

室内外の至る所、些細な部分にまで美にこだわっており、逆に粗探しする勢いで各部を見ていくのも面白いものが発見できそうです。

石川丈山は書を書いても達人であり、室内には丈山が最も得意とした隷書(れいしょ)で書いた作品が数多く展示されています。この掛け軸ですが、福禄寿といえば七福神のうちのひとりですが、その事なのでしょうか。今見てもデザインセンスが素晴らしいです。

この部分が面白い。角をショートカットして歩ける?細い竹なので壊れそうで乗らなかったが。

この空間に入り込んで思わず、いいところだな、と呟いて長いこと座っていたくなります。詩仙に憧れていた丈山は、行くことが叶わない漢や唐を偲んで「唐様庭園」とした庭を作庭しました。

ここ詩仙堂の名前ですが、建物中央の「詩仙の間」の欄間部に、漢や唐の時代の詩人(詩仙)36人の肖像画が飾られているのに由来します。これらの肖像画は徳川幕府の御用絵師として知られる狩野探幽とその弟子による作品です。(現在飾られているのはその模写になります。)

部屋から庭に出ることができます。段々に低くなって行く庭の奥の方まで散策できるような作りになっています。

丈山はここを「凹凸窠」(おうとつか)と名付けたほどに、この地は起伏に富んだ地形となっています。縁側から庭に出ると、木立の脇に「鹿おどし」(ししおどし)を庭に取り入れた最初の例と言われる実物があります。鹿おどしは、水がいっぱいになって竹筒がカッコーンと音を立てて鹿などの動物を追い払うための農機具です。しばし見ていると柔らかい竹の音が心地良いです。

初夏に訪れると、室内からの庭の眺めは緑色一色に塗りつぶされているかのようです。一般的には奥の方が高くなっている庭が多いですが、こちらは右の奥の方へ行くに連れて地形が下がっており、見渡すとどのように繋がっているのだろうと、視線と興味の誘導に成功しています。

凹凸窠は起伏に富んだ地形に建っていると言う意味であって、建物自体にアップダウンなどは無く、平屋の一層の建物です。

かつて使われていた「おくどさん」(かまど)が残されていますが、この規模の建物にしては口数が多いように感じます。かつては別棟などがあって使用人なども多く居たのかも知れません。建物上部に煙抜きが備わっていますので、ここでは上を見上げて見てください。

一乗寺エリアにはこの詩仙堂と同様にじっくりと滞在して堪能したいお寺が揃っています。冒頭で挙げた圓光寺、金福寺、曼殊院門跡と併せてほぼ一日かけてゆっくりと廻れば、京都をめぐる歴史の一部を体験することができると思います。

コメントを残す