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京都逍遥 《天龍寺 塔頭 宝厳院》

宝厳院とは

大亀山 宝厳院(ほうごんいん)は京都五山第一位の格式を誇る天龍寺の塔頭として、春と秋の特別公開期間は見事なもみじや苔を鑑賞しに多くの観光客が訪れる、嵐山きっての名刹です。

宝厳院は室町幕府管領(かんれい)の畠山頼之の開基、夢窓疎石の弟子聖仲永光の開山となる臨済宗の禅寺です。管領とは、室町幕府での将軍に次ぐ要職であり、また畠山氏と言えばのちに家督争いに端を発した応仁の乱の直接の原因を作った家でもあります。そのことは特に宝厳院には無関係ですが、皮肉にもその応仁の乱でこの寺も灰燼に帰し、廃れてしまいました。その後は豊臣、徳川とその時の実力者の帰依を受けてその永脈を現在まで保ってきています。現在の天龍寺境内の大堰川寄りの地に至ったのは割と最近で、2002年以降の事です。

宝厳院へ

宝厳院へは、嵐電嵐山駅もしくは阪急嵐山駅から徒歩で天龍寺の境内まで来たら、参道をそのまま進み庫裡(くり)の手前左手にある法堂(はっとう)で左折してそのままの道を進むと次第に見えてきます。この近辺はちょっと、しっとりと落ち着いた雰囲気が嵐山らしくていいです。ふと見ると、嵐山羅漢が真っ黒な集団でこちらを見ているのでギョッとします。アジサイの時季ならばモアイ像の様な石像とアジサイが解け合った風景が見ものです。手前の門は通用門で、拝観受付と兼ねた山門はその先の大堰川寄りにあります。

拝観は春と秋の年に2回の特別拝観の期間しかできませんので注意が必要です。春は3月から6月末まで、秋は10月上旬から12月上旬です。拝観料700円を納めて入山します。同じ天龍寺の塔頭である弘源寺との共通拝観券900円もありますが、弘源寺とは拝観期間が異なるので確認の上ご参拝ください。御朱印は山門で書き置きタイプのものを頂けます。

獅子吼の庭

境内に入るなりすぐに回遊式庭園が始まり、順路が案内されているのでゆったりと好きなだけ一筆書きで堪能していけます。この寺を訪れる最大の楽しみはこの庭園にあると言えます。古い本堂や国宝の仏像があるわけではなく小さなお寺ですが、京都随一の美しい苔の海が怪しいほどの深い緑で迫ってきます。

さっそく順路に沿って進むと気付くことがあります。これだけ広い庭園ですがあえて池を配していない様です。こう言った庭は「池泉回遊式庭園」と言って池を中心として池の周りを回る例が多いです。こちらの場合は池の代わりに大きな玉砂利を並べた庭が、池のある雰囲気を作っています。

この玉砂利の庭の向こう岸には釈迦三尊像に見立てた石が三つ並んで置かれています。三尊石といい、中央が釈迦如来で、脇侍に文殊菩薩と普賢菩薩を配しています。仏の説法を聞きにいくために手前の玉砂利の海を渡るというイメージで、船石も置かれています。

玉砂利の庭を過ぎるとさらに緑が濃くなっていきます。同時に巨大な石が配されていて、何かを諭されているような気がしてきます。この庭園、獅子吼の庭(ししくのにわ)といい、仏が説法をしている状況を表しているとのことです。たしかに無言のうちに諭されておりました。

砦岩。

この庭、できればあえて雨の降る6月の梅雨の時期に訪れるのが最適かもしれません。苔や木々のとにかく圧倒的な深い緑色の世界に引き込まれていきます。

茶室のアプローチ

茶室

獅子吼の庭を奥に進むと建物がいくつか見えてきます。最初に出くわすのが茶室で、特別拝観の最中はここで抹茶を頂くことができます(500円) 。二面が完全に解放された、庭との繋がりを感じる茶室です。縁側から上がり赤の毛氈の上で庭を眺めてゆっくりできます。

本堂

真新しい建築の本堂は、平成20年に新築されたものです。御本尊は十一面観音菩薩立像で、ご本尊の両側に西国三十三所の観音像を祀るという珍しい形式となっています。本堂は特別拝観の期間は参拝することができます。(拝観料とは別に500円)縁側の側に配置された廊下からのみ室内を伺いますが、できれば室内に入って三十三の観音像を拝したいものではありますが。

本堂の玄関から少し脇を望むと小川に面した書院がいい雰囲気。

書院

書院は非公開で立ち入ることはできませんが、できることならこちら書院を公開して欲しいと感じる、佇まいのいい建物です。大正8年の築となる、近代数寄屋建築の代表例です。

獅子吼の庭 〜 苔の海

獅子吼の庭を本堂も過ぎて、回遊も後半に進むと木々の植栽は少し抑えめになり苔の海が広がります。こちらの苔は輝くような色と艶が見事で、京都の庭園でも随一と言えるほどのものです。本堂の隣にある大正時代建立の書院の前には水の流れがあり、ここを起点に苔の海の中を小川となって流れていきます。

書院の近辺より流れ出る小川の流れ。

獅子吼の庭 〜 宝厳院垣

獅子吼の庭にはいくつかの特徴的な垣根が据え付けられています。垣根の形状は多種多様であり、その寺や庭の名前が付けられることも多いですが、ここ宝厳院にも竹の枝を下向きに蓑のように多数束ねて、上部には小屋根を付けた特徴的な宝厳院垣があります。

宝厳院垣
庭園内にも羅漢像が
獅子岩

宝厳院はすぐ先が大堰川ですが少しだけ下流に歩くと渡月橋があります。近いよしみかどうかはわかりませんが、渡月橋の古い親柱が庭に置かれています。

大堰川?桂川じゃないのか?と思う方も多いかと思いますが、渡月橋を境に上流を大堰川、下流を桂川と言い、更に上流は保津川と言うなど、ややこしい川ではあります。宝厳院でそんな心を無の境地にしたいものではあります。