
古都鎌倉とは。
古都鎌倉、800年前の幕府開設からその歴史が続いている街。しかしながら、そもそも「古都鎌倉」といいますがその全盛期やそれに近い時代の建物や、お寺のお堂や三門や塔などは残念ながら全く残っていません。そう言ってしまえば京都でさえも応仁の乱で洛中全て焼き尽くされており、千本釈迦堂の本堂などかなり少数しか残っていないのではありますが。

もちろん寺社の多くは鎌倉時代の創建ですが、現存するお堂のほとんどは割と近世の再建であり、先述の通り鎌倉時代や続く室町時代の古いものは残っていません(円覚寺 舎利殿は国宝ですが移築建築です)。 物事の解決を戦の勝敗をもって決める世であり、建物の全てが木造であるため勝負の手段として家屋に火が放たれるのが常であるような時代でした。寺院以外にも例えば鎌倉幕府の庁舎?のようなものなども全く残っていません。火災があっても燃えない五輪塔や宝篋印塔などの石碑類は結構残っていますが。

しかしながらそれでもやはり鎌倉は800年の歴史がある古都であり、この街の歴史を感じる雰囲気が好きで人はやって来ます。そして人の集まるところにお店あり、という事で街歩きを楽しくするお店がたくさん集まっています。小町通りや若宮大路の土産物店を眺めながら鶴岡八幡宮に行くルート、長谷では長谷寺からの鎌倉大仏高徳院ヘ、戻って海が見えるカフェで一息といった感じでしょうか。

こう言った歴史を感じられる雰囲気、ぎゅっと詰まった狭いエリア感、短い編成でゆったり走る江ノ電、ちょっと歩けば久し振りに見る海、鎌倉らしさとは街全体に広がるのんびり感だと思います。

江ノ電でのんびりと。
江ノ電、正式には江ノ島電鉄。特に鎌倉から江ノ島までの区間は、ただの移動手段の電車ではなく、多くの人がこれに乗るのを楽しみの一つと感じてここに来ます。

江ノ電は明治35年に開業と日本で6番目に古い歴史を持つ鉄道で、創業から100年を超えています。現在は他で廃止が相次いだため3番目の古さとなっています。昭和の頃には経営危機になるなどの困難な時期もありましたが、最近では不動の人気エリアとしての地位を確立した鎌倉に不可欠の存在として、人気も安定しています。


江ノ電には車両のタイプがいくつもあり、上の写真の古めの車両が来ると嬉しかったりします。

どんなところを走っている?
路線のうち、鎌倉駅からしばらくは住宅地の隙間を縫うように宅地ぎりぎりのところを、家や垣根をかわしながら走るため敷地の入り口が線路に面している家もあります。電車が来ないのを見計らって近くの踏切から線路を歩いて家に入るようです。

和田塚駅のすぐそばにある甘味処無心庵は線路から入ります。行かれる際には電車に気をつけてください。

車窓からの景色を眺めていると面白い景色が次々に出てきます。




創立からしばらくは現在の全路線の藤沢から鎌倉までではなく極楽寺までの営業であったのは、極楽寺の先のトンネルの建設に手間取ったからであり、このトンネルの完成以降に鎌倉までつながりました。その鎌倉駅の位置は現在のJR鎌倉駅の西口側ではなく、逆の若宮大路側にありました。下の地図では、現在は左下の方からやってきた江ノ電はJR横須賀線の線路手前で大きく左にカーブしていますが、かつてはここでカーブせずに直進して若宮大路に入り込んでいました。
ところで鎌倉とは?
鎌倉市は、西は江の島の手前の腰越あたりまで、北は大船のあたり、東は朝比奈あたりまでの範囲を持っています。

いわゆる観光地の「鎌倉」をいう場合は、そのエリアは狭く限られた範囲です。「鎌倉散歩~妙本寺」にも書いたように、南面の由比ヶ浜以外の3方を山に囲まれたエリア、京都でしたら洛中という都合のいい言い方があるのですが、鎌倉ですとなんでしょう古都エリアとでも言いましょうか、そこはかなり狭いエリアとなります。

江ノ電でいうと鎌倉駅から極楽寺トンネルあたりまででしょうか。道でいうと7つの切り通しの内側ということになります。山に囲まれているため、市中に入るのに必要な要所を山を切り削って通路状にしたものを切通しといいますが、これが鎌倉には7箇所あります。鎌倉七口とも呼ばれています。細かく言うと、出入口ではない切通しがもう一箇所(釈迦堂切通し、現在通行止)あるので、切通しとしては8箇所あります。切通しを歩くと、岩盤を手掘りしたのかのような場所が残っていたり、敵の侵入を妨ぐためにあえて路面に大きな岩を残してあるなど、鎌倉時代の名残が多く見られます。

源頼朝が日本史上初の武士による政権を打ち立てたのが鎌倉幕府であり、それまではずっと天皇と貴族が中心となって近畿を中心とした場所において政を司ってきたのが、いきなり田舎地方であった坂東(今で言う関東)の土地が日本の中心になったうえに武士中心による政治に代わったのです。鎌倉はそう言った事では、画期的でもあり異色でもあるのです。

江ノ電沿線
江ノ電で鎌倉駅を出発すると、前出の甘味処無心庵のある和田塚駅に着きます。和田塚駅の和田とは幕府の有力御家人一族の和田氏の事で、執権の北条氏に一族もろとも討たれ、その菩提を弔うために建てられた塚が和田塚であり、そのまま駅名になっています。

次は由比ヶ浜駅でその次が長谷駅です。単線の江ノ電がすれ違えるように線路が2本に分かれてホームは2つあります。

長谷(はせ)界隈は鎌倉駅近辺に続く人気エリアです。駅から北側に行くとあじさい寺として有名な長谷寺や、大仏のおられる高徳院があるため狭い歩道を多くの人が歩いています。この狭い歩道が鎌倉のゆったり気分を壊す存在で、どうにかならないかと思ってしまいます。南側に行くと歩いてすぐ海が見えます。海が近いエリアは一軒家カフェが多く、人気店には行列ができるほどで、最近はのんびりと落ち着ける小洒落た店が多いので散歩好きにはもってこいのエリアです。もう一つのアジサイ寺である成就院も海側です。ですが、アジサイが咲き誇っていた斜面は工事のためにアジサイが伐採されてしまったため、以前のような見事な花を見る事はできません。

長谷を過ぎて江ノ電唯一の極楽寺トンネルを過ぎると極楽寺駅はすぐです。

ここの駅前ののんびり感は相当です。改札を出て振り返ると小さな駅舎の脇には朱色の円柱のポストがあり、懐かしい景色とはこういう景色ですよと教えられているかのようです。海に近い田舎まで、かなり遠くまで来たかのような景色です。

極楽寺駅にはその名の元となる極楽寺と言うお寺さんがあります。鎌倉時代創建の歴史あるお寺であり、現在でこそこじんまりとした佇まいですが、当時は相当な大寺であったようです。残念ながら境内での撮影は禁止されていますので、三門だけ掲載します。

ここに近い極楽寺坂切り通しにその名がある事からも極楽寺の歴史が分かります。現在の極楽寺坂切り通しは車が通れるほどに拡張されているため当時の姿ではありませんが、成就院側の崖はひょっとしたら当時のままではと言う感じです。
極楽寺駅の次は稲村ヶ崎駅です。サザンの歌にも頻繁に出てくると言ったら歳がわかりますね。映画もありました。極楽寺から稲村ヶ崎までの途中の景色はのんびりとした田舎風で気分が和みます。稲村ヶ崎とは海岸が岬状に海に飛び出た景勝地のことです。


道路スレスレに江ノ電が走って行きます。柵も何もないので結構スリリングではあります。オレンジ色に塗られた縁石だけが江ノ電と道路を分けるその目印となっています。


稲村ヶ崎を過ぎるとこれまで住宅の隙間を縫うように走ってきた江ノ電の景色が一気に開けます。晴れた日には車窓の外を見ていたならば誰もが海に来たなと、空の広がりと空気の青さを感じるでしょう。

メディアへの露出が多くあちこちで見かける鎌倉高校前駅は、目の前が一面の海です。ちょっと視線を上げれば、水平線が横一直線に一点の歪みも無く空との境を描いています。

目の前を通る道路は国道134号線で、相模湾に沿ってずっと湘南海岸の海岸線を一通り走り抜けることができます。春から夏にかけての週末はいつも渋滞していますが、車で来る人もこの雰囲気を感じるために来ているので渋滞も一興といったところでしょうか。


鎌倉高校前駅を降りてすぐの踏切はドラマやアニメなどで、この坂道からの海の眺めと江ノ電の踏切を入れた構図が印象的なシーンとして登場します。最近ではアニメの影響で外国人観光客がそのシーンと同じ構図で写真を撮ろうと大勢やって来ています。

腰越まで来ました。有名なお寺が一軒あるので行ってみたいと思います。満福寺です。古い話ではありますが、やはり鎌倉ですので鎌倉時代の話です。源義経が兄の頼朝からの激しい怒りを買って鎌倉入りを拒まれていたときに頼朝宛に書いた手紙、「腰越状」はこのお寺で書かれたものです。この時、京都で知り合った弁慶も一緒に来ていたようで弁慶の腰掛石なる史跡があります。





万福寺全景


腰越駅を過ぎて、次の江ノ島駅までは道路を走る路面電車となります。多くの車が走っていますがお互い何事も無かったかのように走っています。

この区間は商店などもあるため路上駐車があったり、そこに電車が来たりとちょっと歩きづらいエリアです。


更に道路脇の電柱も結構邪魔だったりします。しかしこれ、江ノ電の電線ケーブルも支えているようなので取り去るわけにもいかなそうです。



江ノ島駅までもうすぐです。この龍口寺前のS字カーブで江ノ電が来るのを待ち構えます。道路としては交差点にもなっているので車の侵入が重なった時は結構危険ポイントだと思います。





江ノ島駅到着です。ここはもう藤沢市です。ここから先もいろいろ面白そうですがとりあえずこの辺までとします。江ノ島まで行ってしらす丼でランチや、カフェならLONCAFEで超絶おいしいフレンチトーストなんかも良いですね。帰りはここから湘南モノレールでという手もあります。ぶら下がり式のモノレールも変わった乗り心地で面白いです。




