山手の丘へ
横浜の街はいくつかのエリアに分かれていて、それぞれでそのカラーが異なり、雰囲気や街の構成要素もまたそれぞれであるため、気分や目的に合わせて楽しめます。今回行く山手の丘はその一つですが、ここはショッピングではなく観光を楽しむエリアとなります。洋館が点在するエリアを中心に港の見える丘公園や外人墓地などの著名なスポットや、小洒落たカフェやレストランなどの集客要素から構成されています。全体的な雰囲気は異国情緒の漂う、落ち着いた散歩に適したエリアといった感じです。ここで一日過ごすというよりは、元町での買い物の後にここまで散歩しにくるというイメージでしょうか。

では山手の丘へ行ってみます。場所的には元町商店街の南側に広がる丘の上一帯がそれに当たります。行き方は何通りかあるので順を追って見ていきましょう。まず一番一般的な順路が元町商店街の一番東の端にある谷戸坂から登るルートです。「登る」と書くくらいにこの道は非常に急な上り坂であり、バスに乗車していくのが無難です。歩いていく場合、車もかなり通りますのでこの谷戸坂を行くよりは坂道と並行しているフランス山を通って登るほうがいいかも知れません。
また、今ではこちらのルートで行き来する人の方が多いとも言える、みなとみらい線の元町・中華街駅に直結しているビルからそのままアメリカ山に出るルートもあります。こちらはそのビルのエレベーターやエスカレーターを使えるので登るのが楽です。このエリア、ここから先は一帯が丘の頂上の尾根伝いに広がっているので坂の上り下りはさほどありません。
港の見える丘公園
ここ港の見える丘公園は季節ごとにいろいろな花が咲く、西洋風花の公園といった感じで、特にイギリス館の前庭でもあるイングリッシュローズの庭は開花の時期はあふれる甘い香りで満たされます。

イングリッシュローズの庭から港の展望を見ようと一段下がったエリアに行くと、噴水の池を中心とした花壇の庭園がきれいに整えられていて、ベンチに座って佇んでいると時間が経つのを忘れてしまうほどです。アーチ状に植栽された花のトンネルは、本当に欧州のガーデンに居るようです。


さて、ここにだけずっといる訳にもいかないので港の眺めを見ようと公園の端に移動します。港の景色はというと、残念ながら素晴らしい景色とはとても言えないというのが正直なところです。ここからの眺めは、ちょうど新山下の住宅やビル、倉庫などが建ち並ぶ地域であり、前方に横浜ベイブリッジこそ見えますが、景観的には見るものはありません。港のきれいな景色を楽しむならマリンタワーには遥か及びません。ちょっとこの公園名称は、ここじゃないなと言ったところです。

公園を出る前にイギリス館に寄ってみましょう。ここは現在は横浜市が管理運営していますが、元はイギリス総領事公邸として建てられたものです。イベントが行われているときなど入館できない日もありますが、基本的には無料で見学できます。食事も可能なカフェが併設されているのでゆっくりしてみるのも良いかもしれません。



外国人墓地
外国人墓地は、幕末に日本に対して開国を迫った米ペリー艦隊の仲間を埋葬したことから始まったと言われています。この場所、元々はお寺の境内であったのですが、外国人墓地となったことによりお寺は移転しています。

ゲートをくぐって中に入ると、やはり日本の墓地とはかなり異なった雰囲気で、墓石が十字架になっているのを見る事はめったに無いので、ちょっと物珍しい感覚を受けます。墓地内は入場者が好き勝手に歩き回って荒らすことの無いように拝観コースが決められていて、それに沿って一周廻るようになっています。神聖な場所であるので、静かに見学して早々に出ることにします。



山手聖公会
墓地を出て十番館の方に歩いていくと、ゴシック風と言うか、中世の城のような教会が見えて来ますが、これが冒頭の写真でも使った山手聖公会です。横浜開港時代の居留地であった山下町から、1901年にここに移転してきました。しかしその後は関東大震災で倒壊したり空襲による火災等で2回の建て替えを経て現在に至ります。通常は内部に立ち入っての見学も可能です。

山手234番館
その先の同じ側にすぐあるのが山手234番館です。関東大震災によって一帯のほとんどの建物が被害を受けてここを離れていた外国人に戻ってきてもらうという施策で、3LDK4世帯の洋館風アパートとして1927年に建築されました。月日の流れは早いものでこんなモダンな洋館でも築100年です。築100年というと、たいていは木造の古民家を想像するのが常ではありますが、、、。現在は横浜市が管理しており内部見学可能です。ちなみにここの住所は横浜市中区山手町234ー1です。現在の名称はおわかりの通り住所から命名されています。


えの木てい
ここ234番館の隣にも洋館があり、「えの木てい」というカフェになっています。前庭のガーデンにテラス席があり、気候のいい時期にはテラスでのんびりできます。店内では洋菓子の販売カウンターもあり、こちらの洋菓子は全国のデパートでも売っている人気商品です。ですので洋菓子店にカフェが併設といった方が正解でしょうか。
エリスマン邸
レトロな電話ボックスのある、えの木ていの向かい側一帯は元町公園の一部であり、木立の中に佇むようにエリスマン邸があります。フランク・ロイド・ライトを師に持つチェコ人の建築家レーモンドの設計で、1926年にここから多少離れた場所に建てられました。この場所には1982年に移築されてきたため、なんとなく立地の場所的に違和感がある気がするのはそのためです。エリスマンというのは、生糸商人でスイス出身の当初の住人のことです。妻が日本人であったため、ここの設計時にはバスとトイレを分けて設計するように依頼しています。亡くなるまでここで過ごし、現在は外国人墓地で眠っています。

エリスマン邸ではレーモンドの設計になる家具類も見ることができます。広い室内を一通り見学すると、こんな洋館に一度は住んでみたいなと思ってきます。せっかくなので併設のカフェでもうちょっと余韻に浸りたいと思います。
ベーリックホール
エリスマン邸の隣りにあるのが、ここ山手の丘にある洋館で最大の規模かつ一番の見どころであるベーリックホールです。外観は他の洋館とは一線を画するラテンな雰囲気を持つ、スペイン アンダルシア地方の建築のようなアーチ風ファサードが印象的な建物です。こちらも居住者のベーリックから建物名称がつけられています。こちらを設計したのは横浜山手聖公会と同じくアメリカ人のモーガンで、1930年に建築され所有者が転々とする経緯を辿りつつも、現在は横浜市が所有管理しています。横長でまとまり感のある四角い建物で、スペインのメスキータを思わせるアーチ状のエントランスから入ると、右手には一段下がったサンルームのような明るいリビングルームがあり、パームルームという付属室が付けられています。この部屋、壁には何に使うか不明なタイル貼りの流しがありますが、なぜかこの流しが印象的で記憶に残っています。1階にはリビングルームの反対側にダイニングルームがあり、見学可能な大きな部屋は以上です。ちょうどエントランスホールの正面に、2階に上がる階段がありますが、ここがこのベーリックホール最大の見せ場と言ったらおかしいですが、とても素敵な石造りの階段であり、洒落た雰囲気で誰かをモデルに写真を撮ってみたいと思わせます。2階には居住者の個室があり洋館ならではのインテリアでまとめられていて、自宅のコーディネートの参考になりそうです。

イタリア山(ブラフ18番館、外交官の家)
ベーリックホールまでは洋館がまとまって立地していますが、ここから先はイタリア山まで少しだけ距離があります。イタリア山庭園にはブラフ18番館と外交官の家があります。まだ時間のある方は、今まで来たその道を進めばありますので、行ってみてはいかがでしょうか。

イタリア山まで行った場合は、そのまま下ればJR根岸線の石川町駅に出られます。まだ散歩途中の方は、先程の元町公園を巡ってみるのもいいかもしれません。あちこちにいろいろな花の咲いている春にはぜひこのエリアの散歩を楽しんでいただきたいです。

